
圧縮性流体力学について

圧縮性流体力学とは、一般的にどのような現象や応用を対象とする学問なのでしょうか?
片野田教授による解説



音速よりも速いガスの流れや,そのような流れの中に発生する衝撃波を扱う学問です.音速は標準状態の大気で340m/sですが,絶対温度の平方根に比例します.気体の種類によっても変わります.衝撃波は身近なところでは,タイヤのパンクや花火の炸裂によって発生します.
扱っている流体や装置について



主に扱っている流体や装置、現象(例:ノズル、粒子噴射など)について具体的に教えてください。
片野田教授による解説



私の主な研究テーマは「ハイブリッドロケット」です.相の異なる燃料と酸化剤を用いるのが「ハイブリッド」の意味です.ただし,爆発しない燃料を使う点が最大の特徴です.私の研究では,燃料にアクリルやロウ,酸化剤に液体酸素かガス酸素を使っています.



ロケットの場合,3000℃近くの高温ガスが音速以上の速度でノズルから噴出し,その反作用として推進力を得ます.超音速流を発生させるノズルを設計するには,圧縮性流体力学の知識が必要になります.
他の研究分野との関わりについて



圧縮性流体力学は、他の研究分野(例:航空工学、材料工学など)とどのように連携していますか?
片野田教授による解説



圧縮性流体力学は,音速よりも速い戦闘機の開発や,ロケットの開発など航空宇宙工学の分野を起源として発達してきました.その後,機械工学の分野でも音速近傍の速度域で動作する圧縮機やタービン,超音速ジェットミル(固形物質を微粉末に粉砕する機械)など,音速よりも速い流れを利用する機械が出現し,圧縮性流体力学の必要性が高まってきました.



また,製鉄の分野でも転炉において溶けた銑鉄から過剰な炭素を取り除く手段として,ガス酸素の超音速噴流の銑鉄への吹込みが行われています.機械加工の分野では,爆薬を水中で炸裂させることで発生させた衝撃波の圧力により,金属の板を塑性加工する爆発成形が行われています.また,医療の分野では体外から結石に衝撃波を照射することで結石を粉砕する治療が行われています.
印象に残っている成果や発見



これまでの研究の中で、特に印象に残っている成果や発見はありますか?
片野田教授による解説



大学院生の時に,超音速噴流中の圧力分布を実験的に調べていました.その時,単純に考えた場合とは真逆の結果が得られました.その理由を探るべく数値シミュレーションを行い,物理的メカニズムを解明して論文化したことが印象に残っています.
今後の課題について



今後さらに深めたいテーマや、今見えてきている新たな課題はありますか?
片野田教授による解説



今後はハイブリッドロケットエンジンの高出力化,高燃焼効率化,その結果としてハイブリッドロケットの到達高度の高度化に取り組んでいきたいと考えています.そのためには,燃料組成の改良や機体部品の軽量化など,圧縮性流体力学とは関係のない技術の高度化も必要になってきます.



インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!