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【慶應義塾大学 吉田教授】管理会計システムが組織変革に与える影響について

吉田教授
取材にご協力いただいた方
慶応義塾大学/商学部 吉田教授 略歴 1968年大阪府生まれ 神戸大学大学院博士後期課程終了後,近畿大学講師などを経て,現職。この間,カリフォルニア大学バークレー校などで2年間,客員研究員として研究をおこなう。代表作『持続的競争優位をもたらす原価企画能力』中央経済社(日本会計研究学会太田・黒澤賞,日本原価計算研究学会賞)など受賞歴,著書・論文多数。製造業のみならず非製造業,地方公共団体,病院などを対象に,管理会計,組織変革,コストマネジメントの経営アドバイザーとしても活動。H29・30公認会計士試験試験委員。
目次

管理会計とはどのようなものでしょうか。経営にどのように役に立ちますか?

管理会計とはどのようなものでしょうか。経営にどのように役に立ちますか?

吉田教授による解説

管理会計(management accounting)とは、会計の枠に留まらず,組織の経営管理(法務・労務を除く)全般を担っており、「経営会計」と呼ぶほうがふさわしいでしょう。会社(組織)が大きくなると,経営トップだけで会社を動かすことに無理が生じてきて,誰かに任せる,予算を立てる,結果を評価する,人を育てるといったことが必要になってきます。

組織の目標達成や持続可能な発展のためのこうした仕組み・仕掛けが管理会計です。管理会計がうまく機能していないと,組織目標が達成されないだけでなく,仕事の分担の不公平感,会社からの評価への不満,仕事の進め方の非効率など,様々な問題が噴出します。

テンション・マネジメントとはどのようなものでしょうか。

テンション・マネジメントとはどのようなものでしょうか。

吉田教授による解説

テンション(tension)とは,組織に本来的に内在する緊張状態のことです。低コストと高品質などの異なる目標の両立に悩んだり(トレードオフ),複数の上司から異なる指示を受けたり(矛盾),業務目標に対して経営資源や能力が不十分だと感じたり(ジレンマ)することがテンションの一例です。

テンション・マネジメントとは,こうしたテンションの状況を把握し,組織的取り組みを実施することで,新たなアイデア創発により組織業績や個人の働きやすさにも寄与する取り組みのことです。

管理会計が企業の目標設定に与える影響は何ですか?

管理会計が企業の目標設定に与える影響は何ですか?

吉田教授による解説

さまざまな管理会計の取り組みがありますが,基本的には,目標設定,プロセスのモニタリング,成果の評価,次のアクションの提示というスタイルで,PDCAサイクル・マネジメントを実施します。

管理会計を適切に活用できていない場合、どのような課題やリスクが発生しやすいですか?

管理会計を適切に活用できていない場合、どのような課題やリスクが発生しやすいですか?

吉田教授による解説

私の経験則では,会社(組織)が150名を超えれば(支社・支店など地理的に離れていれば100名から),適切な管理会計の設計・運用が不可欠です。経営トップは,現場で起きていることや従業員の仕事ぶりが見えなくなってきます。

当然,業績が下がり,取引先・顧客・従業員の不満は増し,経営トップは何が起こっているか分からないので打つ手も分かりません。早急に,自社に合った管理会計を構築する必要がありますね。

欧米と日本の管理会計の違いはどのようにお考えでしょうか?

欧米と日本の管理会計の違いはどのようにお考えでしょうか?

吉田教授による解説

欧米企業では伝統的にコントローラー部門が管理会計や経理の業務を担当してきましたが,日本企業では,管理会計機能が経営企画部や経理部などに分断されて,統合的な業績管理が実施できていなかった部分があると感じています。

近年では,CFOを設置している日本企業においては,CFOの役割変化(財務報告強化から管理会計業務の強化)に伴い,管理会計を担う部門でも,予実差のフィードバックに加えて,予測に基づくフィードフォワードの役割期待が増してきています。

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